君の名前
言い切る
2:奪われたくないものがある
「木村、アイツは?」
俺が彼女の教室にいくと、いつも二人でいるはずの席に、今日は一人しかいなかった。
「う゛ぁー、もう遅いよ」
木村は、俺を睨むと机を数回叩いた。
「・・・約束してたか?」
俺がそう言うと「ちっがーう」と更に鋭く睨んでくる。
「綾香だったら、どっかの男に連れ去られたよ」
これ以上にないくらい嫌そうな顔で「もう少し早くくれば」と、ボソッと言った。
「早いな」
俺が素直な感想を述べると、木村はまた俺を睨んだ。