君の名前


そして、久瀬の方をチラリとも見ずに、彼女は俺の家の玄関を開けた。


「たっだいまー」


悪びれることなく、幼馴染みの家に「ただいま」と言って入っていく彼女を、久瀬は驚いたような、苛立ったような目付きで見つめていた。


「また明日な」


俺は、固まったままの久瀬に声をかけると彼女の後を追おうとした。


「別れねぇからな」

背中に当てられたその言葉は、小さかったがハッキリと俺の耳に届いた。


「あぁ」


俺が頷くと、久瀬は鋭い目付きで俺を睨んだ後、暗闇に歩いて消えていった。


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