零~ZERO~
『詞音…苦しいよ。息が苦しいよ。
また逃げたりするんだったら、もう耐えられない。限界だよ。
もう何も隠したり、1人で抱え込まないで話してよ…話してくれないんじゃ友達より寂しいよ。
私って何なの…?』

怒っていたはずの私なのに、そんな事を口にしていた。

詞音は、私の胸をさすりながら、私の名前を呼びながら、
『苦しいの?苦しいの?大丈夫?ごめんね。ごめんね。
もう絶対逃げたりしないし、何でも話すから…。』
そう言って、詞音も泣いていた。


ひとしきり泣いた後、詞音が何度も咳をしている事に気が付いた。

『風邪、引いてるの?』
『うん。ちょっと…。』
『じゃあ、今日はもう、帰ろう?』
『うん…。』
そう言って、詞音は私を家まで送ってくれた。


2人とも、隠し事をしない、支え合って生きていく、もう逃げない、と約束して。


それから私は、生き返った様に、普通の生活を送れる様になった。

ただ、母には詞音と別れた事にしておいたまま。

だけど、私はまた、地獄に突き落とされた。
あの"約束"を交わした日から、たった2日で。
また、逃げられた。
連絡が取れなくなった。
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