零~ZERO~
タクシーの中は、ヤクザみたいな大柄なと、私。
不釣り合いな2人。

タクシーの運転手は、ビビっていた。


"何処に行くんだろう。"

考える間もなく、ホテルに着いた。

『ここなら、大きな声、出してもいいぞ。』
早川は、そう言った。


私はセックスが好きではない。
人のぬくもりが欲しいだけ。
風俗に来る客の寂しさを埋めてあげる役だけど、私も、ぬくもりが欲しくて、この仕事を始めたのかもしれない。

人に深入りすると、詞音みたいに裏切られるのが怖いから、適度な距離と、ぬくもりを。


早川は、
『梢と居ると何故か癒されて、すぐ眠っちまうんだよなぁ…。』
と、いつも言っていた。

私は、詞音の事以来、人なんか信じられないと思っていたので、その言葉も、私の個室に入るのも、講習でセックスするのも、どの女の子にもやっていれと思っていた。


風俗なんて嘘だらけの世界だ。

だから私も、本当の自分は出さずに、"嬢"となって演じる。

下着をつけない淫らな格好で。
< 38 / 84 >

この作品をシェア

pagetop