零~ZERO~
そしてまた、メアドを聞かれた。

私はルール違反を承知て、メアド位なら…。と、個室の私物入れから、携帯を取り出し、交換した。
けど、番号は教えなかった。

貴矢は、それだけでテンションが上がって、大喜びして、お喋りになっていた。


コール音が鳴って、サヨナラする時、いつも落ち込んでいたのに、その日は嬉しそうにしていた。

貴矢は、こそっと、
『後でメールするね。』
と言って、店を後にした。


その後、私にまた、1人客が付いてしまったので、ラストまで働く事になった。

いつもの様に、早川の膝の上に抱っこされて、お給料渡されて、キスされて。


帰り道、携帯を見ると、さっそく貴矢からメールが来ていた。
何故か2通。

1通目は、自己紹介の様な内容で、2通目は、私からの返信が無いから、騙されたのかと不安のメールだった。

私は、あの後に客が付いたと事情を説明した。

貴矢は貴矢で、手が届かなかった人から、メアドを教えて貰った事が信じられない様だった。



それから、貴矢とのメールのやり取りが始まった。

と言っても、その週に、貴矢に遊びに誘われたのだが。

別に彼氏でもないからいいや。暇だし。
と思って、私は逢う約束をした。


私の家は嫌だったので、近所まで車で来てくれたのだが、貴矢はメールで、
『本当に来てくれるか不安。』
と送って来た。

まだ信じられない様だ。

私は、詞音みたいな裏切りは嫌いだ。
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