零~ZERO~
貴矢は、私が鬱病である事を知っている。


それは、いつも店に来てくれた時、何かの拍子に私の腕を掴まれ、リストカットした痕に触れられてしまったのがキッカケだった。



リストカットの存在を知らない人や、軽蔑する人が多い中、薄暗い部屋で貴矢には傷跡に触れただけでバレてしまった。

色んな客が来る中で、貴矢にだけは、知られてしまった。


『…引いた?』
私は、恐る恐る聞いた。
『ううん。』
貴矢は、表情ひとつ変えなかった。



私は、中学生の頃の苛めをキッカケに、リストカットの癖が始まった。

詞音と喧嘩した時も切った事がある。

もの凄い軽蔑された。

だけど、貴矢は違った。


それから、私が鬱病で通院している事、クスリを沢山飲んでいる事をカミングアウトした。

『ホームページの写真を見た時、可愛いなと思ったのと、この子、何か、はかない様な陰があるなと思ったんだ。』
そう言われた。



占いが終わった後、軽く食事をし、夜景が綺麗な公園に連れて行ってくれた。


貴矢は、自分の事を色々話してくれた。
自分が、何の会社で、どんな事をしているか…とか。

…でも、私は興味が無かったので当時の事は、あまり覚えていない。
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