零~ZERO~
それでも何故か、誘われるままに、次の日も貴矢と逢っていた。
自分でも何がしたいのか分からない。

プライベートで逢うのは、2回目。
しかも次の日なのに、ホテルに行った。



ちゃんと告白された。

『俺、梢ちゃんと付き合いたい。』
『私は、面倒くさい女だよ。
こんな身体だし、我が儘だし、手がかかるよ。
元彼の事、未だに忘れられてないし。
やめた方がいいよ。』

『俺は、元彼とは違うよ。
逃げたりしない。ちゃんと向き合って話すし。
絶対裏切らない。
病気も一緒に治して行こう?てか俺が治してやる!』
『元彼の事、まだ引きずってるんだよ?失礼じゃない?』
『だから、忘れさせてやるよ。
こんなに愛しい人と出逢った事無いよ…。
だから…付き合って下さい。
梢ちゃんが全てなんだ。』


私は、自然と
『うん…。』
と、答えていた。



抱きしめられた。
店とは違う、もっともっと愛のある抱きしめ方だった。


『あなたみたいに、酒とクスリに頼りたくない。』
と言ってきた詞音とは、確実に違う。


この人は、詞音なんかじゃない。貴矢だ。


私が今までしてきた事を軽蔑しないで、受け入れてくれた人だ。


私は、きっと、こんな人を探していたんだと思う。
だけどそんな人、居ないと思ってたし、まさか貴矢と言う人から想いを伝えられて、展開が早すぎて、ついて行けなかったんだろう。
詞音の傷も癒えないまま。


他の人からしたら、訳の分からないし奴だろう。

でも私自身だって驚いていたのだから。


貴矢に本名を教えた。
"零"と。
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