零~ZERO~
だから、私は私なりに、家で貴矢の帰りを待つ間、自分で出来る限りの事をした。


料理もロクに出来ないけれど、薫に貰った料理本を見て料理をしたり、親に叱られる程、汚かった実家の部屋より、マメに掃除をしたり、親に任せっきりだった選択も、楽しんでやった。

自分しかやる人が居ないので、当然の事だけど、貴矢の為に何かをする。
というのが、私にとっての喜びだった。



貴矢も明かりのついた家に帰ってくるのが、楽しみだという。

今でも言われるのが、キッチンで私が何かをしていたり、フトした時に"梢"だった、手の届かない人だったハズの人が、自分の側に居るのが、信じられない気持ちになるそうだ。
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