零~ZERO~
結果は、陽性…。妊娠していた。

検索終了の数分を待つ間も無く、陽性と出た。



その時の私の気持ちは、焦りもせず、悲しみも、喜びも無かった。

鬱のせいで、感情が、あまり出ないせいだったのだろろうか。
それは、未だに分からない。



『あらー…。』
と、検査薬を暫く見つめ、トイレにうずくまっていた。
トイレから中々出てこない為、心配した貴矢がドアをノックする。


私は、あっさり
『妊娠していた。』
と言った。
それに対して貴矢は、
『やっぱり…。』


時間がたっても、実家がわかなかった。
このお腹に命が宿っている。
ただ胸が張っているだけで、何も身体に変化は無い。
この胸の張りは、妊娠のせいだと分かったけど。


産む、産まない。
何も考えられなかった。
貴矢の方が動揺していた。
『嬉しいけど、心配。』
そんな感じだったと思う。



実感がわかなかった私は、2本入りの検査薬を、もう1本、次の日の朝に、もう1ど使ってみた。
結果は、やはり陽性。


昨日の事は、本当の事だったんだ。
と、少し現実を見られる様になった。


貴矢は、仕事を休んでくれて、事実を確かめたくて、病院に連れて行ってくれた。

女性しか居ない待合室で、貴矢は手を握って一生に待っていてくれた。



名前を呼ばれて、診察を受けた。

妊娠5週目だと分かった。
エコー画像に、小さな小さな、点が写っている。

それが、新しい命だった。
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