Believe~奇跡の鼓動~
ハルくんの動きが止まった。
その場に緊張がはしる。
「く、くるなぁ!」
男はあたしを盾にすると、ぶるぶる震えるナイフを、あたしの顔のあたりに近づけた。
すぐ目の前で揺れるナイフの恐怖に、あたしは息をすることさえ上手く出来ない。
嫌な汗が背中を伝っていく。
あたし達とハルくんの距離は、ほんの二メートルほど。
なのに、それがものすごく遠くに感じる。
男の焦る目とハルくんの視線はぶつかり合ったまま動かない。
あとになって思えば、それはほんの数秒間なのだったのだろう。でもその時は、
とてつもなく長く感じた。
ふいに一瞬、ハルくんが視線を男から横に大きく外した。
すると自然とつられるように男の目が一瞬そちらを追う。
まさにその一瞬だった。
一気に距離を縮めたハルくんはナイフが握られていた男の手を蹴りあげた。
ナイフは宙をまい男の手から離れていく。
焦る男の後ろ頭にハルくんはすばやく二発目を放ち、まさに一瞬の間に、決着はついたのだった。
気絶した男の腕から解放されたあたしは、
そのままハルくんの腕のなかにおさまった。