Believe~奇跡の鼓動~
あの子は、本当にあたしを刺す気だ。
そう確信すると、体が震え、足がすくんだ。
怖くてたまらないのに、彼女から目が逸らせない。
「か、神埼、逃げろ!
あいつは俺が…」
肩を押さえ、ふらつく足で立ち上がろうとするハルくんに、あたしは、はっとした。
あたしを庇って怪我をしたハルくん。
なのにそれでもなお、あたしを守ろうとしてくれている。
きっと、肩の怪我は相当な痛みのはず。それはかれの表情を見れば一目瞭然。
満足に動けないはずなのに、それでも彼は体を張ってまで、あたしを守ろうとしてくれている。
…そんなのだめ。
彼ばかりがあたしのために傷つくなんて、
そんなのは嫌。
これ以上ハルくんを傷つけるわけにはいなかい。
怖いなんて言ってる場合じゃない。
今度は、あたしが守らなくては!
あたしは震える足を叱咤して、勢いよく立ち上がった。
ハルくんの前に立ち、近づいてくる彼女と正面から向き合う。
「か、神埼、だめだ」
ハルくんの声には答えず、あたしは震える唇で大きくひとつ息を吸い込んだ。
彼女がにたりと笑った。