Believe~奇跡の鼓動~

あたし達が歩き始めたとき、目の前にここにいるはずのない人がいた。




「なっちゃん!」


なんでここに!?


なっちゃんは、あたし達の前で一度足を止めると、あたしの頭を軽くなでた。

「ちょっと行ってくる」

「え?」



そっちはあたしの家…
なんで!?だって…!


「なっちゃん!?」



「あかり、ちょっと待ってて」

なっちゃんがにこりと笑った。
それは久しぶりにみた、澄んだ青空みたいななっちゃんの笑顔。





あたしのなかで、数日前の記憶がよみがえる。
あの事件のあと…



………『俺のせいだ』
今回の事件を招いたのは自分だと、なっちゃんはずっと自分を責めていた。
気づかなかった、助けにいけなかった自分を悔いていた。


あたしが休んでいる間、なっちゃんは何度もあたしの家にきて、あたしと両親に謝った。
何度めかの時、その日家にいた父が言った。


『君のせいではない。
ただ…しばらくは娘に近づかないでほしい。』


そう言った父に、なっちゃんは
『わかりました』と、頭を下げた。

そしてその次の日から、なっちゃんはこなくなった。
あたし達を繋ぐのは電話の声だけ。

でもその声も、あたしへの謝罪ばかりで…
顔を見なくてもわかるほど、なっちゃんの苦しみは痛いほど伝わってきた。





でも、今日はちがう。



なっちゃんがあたしの家の前で立ち止まった。
その目の前には、さっきあたしを見送った両親が立っていた。

そして、なっちゃんは両親に向かって深く頭を下げた。


「この前の約束、なかったことにしてください!」


「どういう意味だね」

父が静かに口を開いた。


「確かに俺があかりさんと一緒にいれば、また今回のようなことがあるかもしれない。
だから、お父さん達の心配される気持ちもわかります。
でも、俺、この数日間あかりさんと離れていて思いしりました。
俺にはあかりさんが必要です。

お願いします、俺があかりさんと一緒にいること、許してください。」



「それでまた今回のようなことがあったらどう責任をとるんだ」




お父さんとなっちゃんの視線が交差する。
真剣なお父さんの瞳に応えるように、
なっちゃんは一切その目をそらすことなく、
はっきりと言い切った。




「俺が、かならず守ります。
お願いします。俺にあかりさんを守らせてください!」













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