Believe~奇跡の鼓動~
あたし達は教室棟のほうには行かず、三階の渡り廊下隅の階段に腰を下ろした。
ここは普段、めったに人はいない。
「あのさ、このまえのことだけど」
「!ハルくん!あたしはやっぱり、なっちゃんが好きなの。だから、ハルくんの気持ちには応えられない。」
あたしはぐっと力を入れ、一気に喋った。
あたしなりに考えた結論。
あたしはなっちゃんが好き。それは変わらない事実。
だったら、あたしに気持ちを打ち明けてくれたハルくんに、あたしもしっかり答えないと失礼だと思ったのだ。
間髪入れず一気に言いきり、あたしはハルくんの言葉を待った。
「うん。それでいいよ」
「え?」
「二人が想いあってるのはわかってるし、俺はなにも今すぐ神埼を那月から奪いたいとか思ってない。」
「あ、そうなの?」
あたしはたぶん間抜け顔になっていたのだろう、ハルくんはクスリと笑って続けた。
「俺は那月と喧嘩したいわけじゃない。
ただ、もう自分に嘘をつきたくなくなったってだけ。
二人を邪魔したいわけじゃない。
俺の気持ちに応えてくれなくてもいい。
ただ、神埼を好きでいたいんだ。」
「でもそれって」
ハルくん、すごく辛いんじゃないの?
報われないとわかってて、人を好きでい続けるなんて…
「そんな顔すんなって。
俺がそうしたいから、そうすんの。
だからさ、頼むよ。俺を避けないでほしい。
いつもみたいに笑って?」
ハルくんの笑顔が悲しそうなのに、あたしだけ笑えだなんて無理だよ。
応えてくれなくてもいいなんて、強がりだよね?
でもそれがわかってても、あたしにはどうすることも出来ないんだ。
だってあたしの気持ちは、なっちゃんにしか向いていないから。
「ごめんね、ハルくん」
「 だから謝るなって。これは俺の我儘なんだよ。応えようとしなくていい、いつも通りに接してくれれば、それでいいから。
だから頼むよ。
…………好きでいさせてくれ。」
そう言ったハルくんの顔はすごく切なそうで。
あたしは心臓が押し潰されそうになった。
「……ありがとう」
その時あたしはそう言うだけで精一杯だった。