Believe~奇跡の鼓動~
「ぼくも、はっきりしたことはわからないんだけど」
教室中が静まり返り、三瀬くんの声に耳をすませた。
「昨夜、部室棟で火事さわぎがあったんだ。」
「えぇえ!?火事!?そんなの知らないぜ!?」
ボウズ頭の男子が勢いよく立ち上がった。
「オレ野球部だし、部室棟の目の前だけど、そんなんなかったぜ!?」
「大川うるさい!!ちょっと黙ってな!!」
「そーよ!!今は火事さわぎより那月くんよ!!」
「三瀬くん、火事と那月くんに何の関係があるの?」
女子のブーイングを受け、ボウズ頭の男子はしぶしぶ椅子に座った。
「…さっき三瀬、犯人がどうとか言ってたよね。
もしかして、放火、とか?」
なっちゃんファンのギャルが泣きそうな顔で呟いた。
「いや」
三瀬くんはすばやく否定したが、その太い眉をぎゅっと寄せた。
「放火じゃなくて…
先生達の話が漏れ聞こえた程度だから、はっきりとは言えないけど、でも原因は、
タバコの不始末らしい。しかも、さわぎがあった部室は、バレー部だったみたいだし…それに、うちのクラスには他にもバレー部員がいるのに、嘉瀬くんだけが呼び出されたってことは…」
「えーウソー」
「でもタバコ隠れて吸ってる男子いるよね」
「知ってる、知ってる!」
「三年の先輩とか」
「二組の佐藤が屋上で吸ってるの見たことあるぜ」
「あ、それ有名だよね。知らぬは先生ばかりってね」
「嘉瀬も吸ってたのか~」
「えーでも、タバコ吸ってる那月くんって、想像するとなんかカッコいいかも」
「ね~似合うよね」
「きゃあ、ちょっと見てみたいかも♪」
「タバコなんてするわけないじゃん!!」
気がつくと、あたしは大声で叫んでいた。