Believe~奇跡の鼓動~
「なっちゃんの名前、ない」
あたしと花菜は顔を見合せた。
「ほら!やっぱりなっちゃんじゃない!!」
喜ぶあたし達の横で、大和先生はあまり浮かない表情だった。
「ね、先生!これなっちゃんが犯人じゃない証拠に」
「ならないな。」
あたしの言葉をばっさりと切ると、先生は重く次の言葉を続けた。
「嘉瀬が犯人ではない根拠にはなるが、証拠にはならない。
先生方の中には、バレー部全体が喫煙を黙認していて、それで今回の騒ぎが行った、とか疑ってる人もいるくらいだからな。」
「そんな…」
喜びの空気が一気に吹き飛び、再び重苦しい空気に変わる。
やっぱり過去は変えられないのだろうか…
そう言えば、と先生が口を開いた。
「さっき、多賀城も同じこと言ってきてな」
「ハルくんが?」
「ああ、名簿みせてくれって。
でもあいつ、名簿みるなり難しい顔して何にも言わすに帰ってった。
あいつのあんな真剣な顔、部活以外で初めてみたわ」
ハルくんは何か見付けたんだろうか?
その時、学年主任の「大和先生!」と呼ぶ声がした。
先生は「やべ!」と言うと、あたしの手から名簿を取り上げると慌て後ろに隠した。
「先生、そろそろ会議始めますよ。急いでください。」
渡り廊下に顔をだした学年主任の低い声に、あたし達もびくりとする。
もしかしたら、その会議って…
「できる限りのことはやるから、心配すんな」
大和先生はそうささやいて、学年主任の後を追っていった。