Believe~奇跡の鼓動~
二人は夕暮れの中庭にいた。

誰もいない放課後の中庭で見つめあう二人。
はたから見れば、大川君同様、告白と勘違いしてしまいそうなシチュエーションだ。
でもあたしは、それが違うことを知っている。

あたしはふわりと宙から二人に近づいた。
今の状態のあたしが誰からも気付かれないのは体験済みだ。

二人のすぐそばに降り立つと、わずかな明かりに照された二人の表情がみてとれた。
ハルくんの、いつになく真剣な眼差し。
小城さんは、いつも通りの落ち着いた表情だ。


「それで?話ってなに?多賀城くん」

「那月の件で。思い当たることあるだろ?」

「?なんのこと?」

「今回の、部室の火事騒ぎだよ」

「ああ、クラスの皆が騒いでたやつね。嘉瀬君のタバコが原因とかなんとか。
でも、それとあたしと何の関係が?」

「あるだろ」

「はあ?」

「いやむしろ、あんたが那月をはめたんだろ?」

その時、小城さんの顔にほんのすこしだけど動揺の色がみえた。
「なに言ってるか全然わからないわ。
そんな話なら、もう失礼するわ、じゃあ。」

「逃げんなよ。」

ハルくんが素早く立ち去ろうとした小城さんの手首を掴んだ。

「痛い!離してよ!」

「お前、自分のせいで那月が今どんな事になってんのか、わかってんのか!?」


< 52 / 226 >

この作品をシェア

pagetop