Believe~奇跡の鼓動~
「嘉瀬君が自宅謹慎になって、せいせいしたわ。
あたしのプライドを傷つけた罰よ。」
小城さんは涙に濡れた顔をあげニヤリと笑った。
「自宅謹慎じゃない。
このままだと停学、悪ければ退学の可能性だってありえる。」
「え?」
小城さんの顔色がかわった。
「喫煙だけなら停学くらいですむだろう。
だけど今回は火事騒ぎのおまけつきだ。
最悪、那月はこのまま退学」
「そんな!!」
小城さんが泣きそうな声で叫んだ。
「私は彼を退学なんかにしたかったんじゃない!
ただ、少し懲らしめてやろうと思っただけ。
ただ、悔しさをぶつけたかっただけ。
ただ…
吸殻入りのカンを他の部員に見られて慌てる彼、その程度のはずだった。ほんのイタズラのつもりだったの。
なのに、鍵を返して帰ろうとしたら煙が…私はどうしていいかわからなくて…
本当よ!
まさか、こんな騒ぎになるなんて…!」
もう日が落ちかけたうす暗い中庭に、その声が響いた。
すると、ハルくんの険しかった眼差しがほんの少し、和らいだ。
「それは、信じるよ。
あの火事騒ぎ、いち早く消火できたのは“誰か”が先生達に通告したから。
部室棟の目の前のグランドにいてもわからなかったほどの小火と煙をいち早く発見できた“誰か”。
その場に居合わせた奴等も、先生達がまっすぐバレー部の部室に突っ込むまで、全く気付かなかったって言ってたよ。
火事騒ぎなんか起こすつもりじゃなかった、その事は、信じるよ」