Believe~奇跡の鼓動~
しばしの沈黙のあと、
小城さんがうつむいたまま口を開いた。
「…どうするの?
あたしを先生につきだす?」
「いや、やめておくよ。」
小城さんはばっとハルくんの顔を見上げた。
「どうして?嘉瀬君の無実を証明したかったんじゃないの!?」
あたしも思わずハルくんに飛びかかりそうになった。
どうして?なっちゃんは無実なのに!
どうして!?
「あんたを真犯人としてつきだして自分の罪が晴れたとしても、きっと那月は喜ばねーよ。
“もとはといえば小城を傷つけた俺がわりーんだよ”
あいつなら、きっとそう言う。
ま、そういうやつだから俺もあいつが好きなんだけど。」
ハルくんは飄々(ひょうひょう)とした様子で続けた。
「それに、“確たる証拠”ってやつもないしな。」
「でも」
小城さんはうつむいたまま、声を震わせ細い拳を握りしめた。
きっと彼女の中で、なっちゃんへの申し訳なさと優等生のプライドがぶつかりあっているのだろう。
「悪かったと思うなら、二度とこんなイタズラはすんなよ。」
ハルくんはいつものハルくんに戻り、そう言って去って行った。
もうすっかり暗闇に包まれた中庭に、彼女はしばらく立ち尽くしていた。