Believe~奇跡の鼓動~
「それで、どういうことなんだね?」
校長先生が、白い髭をいじりながらこちらを見ている。
それでなくても緊張するのに、この重苦しい空気。そしてなにより、校長先生の横で目を吊り上げている生徒指導の天山先生。
彼の存在はこの重苦しい雰囲気に更にただならぬ緊張感をあたえていた。
「どういうことかと言われましても」
固まっているあたしの隣で、大和先生がたんたんと口を開いた。
「私達にはまったく見に覚えがありませんので。
私とこの神崎は、部の顧問とマネージャー、それ以上でもそれ以下でもありません。」
あたしはこくこくと頷いた。
「では、噂のような事実はないと?」
「一切ありません。」
大和先生は真っ直ぐに、ぶれることなく校長先生の目を見ていた。
普段の優しい仮面とも、心を開いた時の砕けた表情とも違う。
芯の通った人間性を感じさせる真剣な横顔。
こういう時の大和先生は、確かに格好いいと思う。
「うむ。では今回は、大和先生のその言葉を信じましょう。」
大きく頷いた校長先生に、天山先生が横から口を挟んだ。
「ですが校長!火のないところに煙はたたぬと言いますし!
もっとよく吟味するべきでは!?」
「そうですね、天山先生のおっしゃることもわかります。
しかし私は、人はまず相手を信じるところから始めるぺきだと思っています。
私は実体のない噂より、目の前の大和先生の言葉を信じたい。
人と人との絆は相手を信じることによってうまれ、また強くもなる。
それが私の持論ですから。」
「…わかりました。」
天山先生が引き下がると、校長先生は再びあたし達のほうに向き直り真剣な面持ちで口を開いた。
「今回は、この件に関しては不問とします。
ですが、確かに、天山先生のおっしゃることも一理あります。
今後は二人とも互いの行動には十分注意するように。
今後またいらぬ噂がたたぬようにね。」
「はい。」
「ありがとうございます。」
あたしと大和先生はほっと胸を撫で下ろした。