ねぇ、センセイ。
接近


それから。本当によく田村さんは先生を連れて来てくれて。

私達の関係は、相変わらず"教師&元生徒"だったけど。

でも先生もすっかりこのお店の常連さんになりつつあった。

そんなある日。

「すみれチャン」

「な、何ですか? 何だか田村さんのその顔、怖いですよ」

先生がお手洗いに立った途端、急にマジメに喋り出した田村さん。

「そろそろアクション起こせよ。アイツ意外とチキンだぞ」

"チキン"て…。
"臆病"てこと?

「………」

「ずっと"生徒"のままだぞ」

それは。絶対に…
「ヤダ!!!」
思わず声が大きくなる。

あ!カウンターの中で佐知子チャンも笑ってる。
げっ。みんなにバレてるとか?

固まる私に「頑張れよ」と、田村さんは私の耳に顔を近付け、内緒話のように耳打ちしてきた。

それを複雑そうに先生が後ろから見てたなんて、

その時は。
知らなかったんだ。

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