裏表プリンス
休み時間が終わってから放課後になるのがとても早く感じる今日この頃、私と煉は苑くんの待っている図書室に向かっていた。
──ガチャ
煉がドアを開くと本棚に寄りかかる苑くんの視線が私達の方に向く。
「ほんとに煉も一緒なんだ」
「苑くん話って何?」
相変わらずの爽やかスマイルを浮かべながら、苑くんは私達の方へ歩み寄る。
でもどこか雰囲気が違うのは気の所為?
「ねぇ、煉」
「何だよ、つーか俺じゃなくて伊桜に話があるんじゃねぇのかよ」
「まぁまぁ。んで本題、伊桜ちゃんの事好きになっちゃったから煉から奪うね?」
…………はい?
「やっぱりその事か、それなら不可能な話だから諦めろバーカ」
「だいぶ自信があるんだね?でも今回ばかりは本気だから」
ちょちょちょ!
一体なんの話してんのこの人達!私を奪うって誰が誰を?全く話が見えないんですけど!
てか煉も『やっぱり』って何?
前にも同じ事があったの?
「まぁ、精々やれるだけ頑張ってみれば?」
「ふふ……上等。じゃそろそろ行くね、伊桜ちゃんまた明日ね」
擦れ違う瞬間、苑くんは一瞬私の頬にキスすると手を振って図書室を去って行った。