裏表プリンス
煉には頬を抓られ、苑くんには傍観され逃げ場がない私。
なんか……今日はお昼から散々だな。
──コンコン
今度こそ部屋のドアから聞こえたノック。
返事を返す前に入って来たのは予想通り、騒がしさに反応したお父さんだった。
煉以外の男の子が居る事に驚いている様子。
「あ、窓からお邪魔しちゃってすみません。最近隣に越して来た、寿々原苑です」
「あ、あぁ宜しくね…じゃなくて!今ちょうどお客様が来たから少し静かにしてね」
『はーい』
お父さんが部屋から出ていくと、さっきの騒がしさが嘘かの様。
あれ?窓から入って来た事には何も言わないんだお父さん。
苑くんも窓枠に手をかけて、自室に戻る体勢をとっていた。
「じゃあ俺もそろそろ撮影の時間だから失礼するよ、またね伊桜ちゃん」
「あ、うん」
「もうお前は二度と来るな!」
煉の言葉にぺろっと舌を見せて、苑くんも私の部屋から出ていった。
再び部屋は私と煉の2人きりになった。