裏表プリンス



「あぁ、確かに助けたの俺だけど?」



さっきとは違う声のトーンに何故か私の身体は固まってしまう。

小桜池くんの手に因って再び正面を向けられた私の身体。

視界に入る彼の表情は、今まで見てきた表情とは全く懸け離れたモノだった。


この人は一体……誰?



「助けて遣ったのにアンタときたら、お礼ナシにビンタして逃げんだもんなぁ?」

「そっ、それはそっちが失礼な事言ったからでしょ!?」

「俺は本当の事を言ったまでだ」



その言葉に私は何も言い返せない。

言い返す言葉が見つからない。


フイと顔を逸らすと顎を持ち上げられ視線は強制的に小桜池くんの方を向く。



「この俺にビンタ喰らわせた女はアンタが初めてだよ、楠原さん?」



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