裏表プリンス
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来ないでと願ってもそんな奇跡的な事は起こる訳がなくて、気付けばもう昼休み。
私は莉紗に行ってくるとだけ告げ、那智が来ない内にお弁当を持って指示された化学実験室に向かう。
私が教室を出ようとした時には既に小桜池くんの姿はなかった。
どんだけ行動速いのよ……。
「化学実験室って此処……だよね」
化学の授業で偶にしか入る事のない実験室に着き、ゆっくりとドアを開ける。
恐る恐る中を見渡すと、窓際奥に腰掛け本を読み耽る小桜池くんの姿があった。
「逃げずに来たね、偉い偉い」
「子供扱いしないで。……て言うかお昼食べても良い?」
「……どうぞ?」
椅子に座りお弁当の包みを開いていると、今さっきまで本を読んでいた彼の姿が私の隣にあった。