裏表プリンス



◇◆◇◆


来ないでと願ってもそんな奇跡的な事は起こる訳がなくて、気付けばもう昼休み。

私は莉紗に行ってくるとだけ告げ、那智が来ない内にお弁当を持って指示された化学実験室に向かう。


私が教室を出ようとした時には既に小桜池くんの姿はなかった。

どんだけ行動速いのよ……。



「化学実験室って此処……だよね」



化学の授業で偶にしか入る事のない実験室に着き、ゆっくりとドアを開ける。

恐る恐る中を見渡すと、窓際奥に腰掛け本を読み耽る小桜池くんの姿があった。



「逃げずに来たね、偉い偉い」

「子供扱いしないで。……て言うかお昼食べても良い?」

「……どうぞ?」



椅子に座りお弁当の包みを開いていると、今さっきまで本を読んでいた彼の姿が私の隣にあった。



< 45 / 156 >

この作品をシェア

pagetop