裏表プリンス
やや粘着質な音を立てて離れた唇。
私は生理的な涙で焦点が定まらない瞳にぼやけて映る小桜池くんを見詰める。
「伊桜の顔、厭らしーい」
「誰……の所為よ………っ!!てか……何でこんな事……っ」
「伊桜は俺のオモチャだって昨日言っただろう?それに、オモチャで遊ぶ事に理由が要るのか?」
「…………っ!!」
囁くように耳元で言われ、私の身体がピクンと小さく跳ね上がる。
それを見逃さなかった小桜池くんは、その儘私の左耳を甘噛みした。
「伊桜って耳、弱いんだ?」
「知らな……っ、やぁ……!!」
耳から脳に伝ってくるあの感覚と少し厭らしい水音。
この2つに私は変になってしまいそう。
珍しく巻かれていない髪を梳いて口付ける仕草に、何故だかドキッとしてしまった。