裏表プリンス



「今のは流石に遣り過ぎた、ゴメン。だから……泣くなよ」

「………へっ?」



言われるまで全く気付かなかった……頬を伝う涙の事。

そして私を見詰める煉の申し訳ないと訴える瞳に、胸にキュッと締め付けられる様な感覚が走った。


この胸の感覚は………何?



「俺、違う教室に移動するから。出る時に扉閉めるの忘れるなよ」

「あ……うん」

「それと………」



一旦足を止めて私の方に振り返ると、本を持つ方の手を此方に向ける。



「コレ、有難うな」

「…………っ!!」



本と一緒に視界に入ったのは、さっき私のあげたおにぎり。

そして2人きりでいる時に見せる事のなかった優しい微笑みに心臓が跳ね上がる。




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