裏表プリンス



唇が離れ、私は直ぐに顔を逸らした。

話をするなら今しかない。



「も、嫌だ……っ」

「伊桜……お前、何泣いて……」

「もうオモチャとかそんな関係嫌だ……」



嗚咽を堪えながら伝える限界。

私は目尻の涙を拭いながら言葉を続ける。



「今のこの関係で煉とキスするのが辛いの、胸が苦しいの……」

「……」

「だからもう、オモチャ辞めます」



腕を抑え付ける力が弱くなり、私は煉を押し退けて部屋へと駆け込んだ。

ドアに寄り掛かる様に座り込み、声を殺して涙を流す。


オモチャじゃなくなって嬉しい筈なのに、私の涙は止まる事を知らない。

暗い儘の部屋に鼻を啜る音だけが響く。



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