俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~
「柚、ストップ」
「へ?」
気が付けば、あたしの口元に池谷くんの手が添えられていた。
あたしは頭にはてなマークを浮かべて、池谷くんのほうに視線を向けると、
「考えてること、分かりやすすぎだから」
「え、何か口に出したりしてた?」
「いや、それはないけど。
――でも、まだ言わないで。俺から言わなきゃいけないことがあるから」
いつの間にか、あたしの家の前に着いていた。
斜め前には、お父さんとお母さん、先生が働いている診療所が見える。
「柚、ずっと前から謝りたかった。
――ごめんな」
そう言って頭を下げた池谷くんの顔は、今まで見たことないくらいに、悔しさが滲み出ていた。
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