俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~
え、池谷くん?
なんで、あたしの腕を引っ張って……、
「確か、あの“桜井医院”って書いてあるのが、実家の診療所だよな?」
診療所のほうに向かってるの!?
「池谷くん、なんで診療所の方に?」
「だって柚は病人だし?病人は医者に診てもらわなきゃ、だろ?」
「いやいやいや!きっとみんな忙しいし、あたしの仮病に付き合ってる場合じゃ……」
「だから、柚は病人!しかも重症!いいね?」
「設定に無理があるって!」
「俺の告白はとりあえず保留でいいよ。柚を苦しめるだけだから。今から先生に診てもらって、心のわだかまりが解けたら教えて」
「え……?」
「俺は柚の弱いところに付け込んで奪いたくないから。先生との関係性が元に戻ったら、堂々とアタックして柚を振り向かせるから」
笑顔で言い切った池谷くんは、勢いよく診療所の扉を開けた。
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