俺をオトしてみろよ。～愛しのドクターさま～

「柚、体温計持ってきて」



「はーい……」




お母さんに呼ばれて、あたしはしぶしぶ受付に向かう。


元から体調なんて悪くないのに、熱なんてあるわけない。


恐る恐るお母さんに体温計を差し出すと、「うーん」と声を上げた。




「３５．８℃。平熱ねぇ。どこの調子が悪いの？」



「えーっと、あのね……」




だから、調子が悪いわけじゃないんだよ、お母さん。


無理矢理池谷くんに連れてこられただけなんだよ、お母さん。


でも、真実を話せるわけもなく。




「頭が痛いとか、しんどいとかいうんじゃなくて……」



「柚？」



「胸あたりが、痛いかな？」




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