俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~



嘘はついていない。

だって本当に、胸が痛いんだもん。


ずっと前から、先生のせいで。




「あら、胸が痛いの?いつから?」



「前から、かな?」



「分かった。とりあえず診察室でお父さんに診てもらおうね」




そう微笑むと、お母さんは他の患者さんの対応をしに、あたしの元を離れた。


あたしは、診療所のあらゆるところに視線を移しながら、そういえばここに来るの、久々だなあ、と考えていた。


小さい頃から、両親の仕事の邪魔をしないように、特別な用事がない限りは、診療所に立ち入らないようにしていた。



だから、ここに来るのも久しぶり。


お父さんとお母さんが働いている姿を見るのも、久しぶりだった。




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