俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~
嘘だ。きっと浮かれすぎて、日本語が分からなくなっちゃったんだ。
だって先生は、さっきまであたしのことを避けてたはず。キスのことだって、診察室で問いただしても何も答えてくれなかったし。
あれ……?というか先生、なんで普通にあたしと話してくれてるんだろう。
「先生。あたし、やっぱり頭がおかしいかもしれません……」
「それは元からだ。気にするな」
真面目な顔で納得する先生を見て、安心してしまった。
ああ、いつもの無愛想でクールな先生だ、と。
あたしがひとりでキスされたことに舞い上がって、一方的に先生との距離を離しただけだったのかな?
先生ってひとは、よく分からない。
「先生、来週の日曜日……あたしと出掛けてくれるんですか?」
「もちろんだろ?俺が誘ったんだしな」
少しだけイジワルそうに微笑む先生を見て、勇気を振り絞ってよかったなって思えた。
あたしはもっと、先生のことを好きになる。そう感じた日だった。
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