俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~
この、どっちつかずの感情を胸にしまい込む。
いけない。あたしには今から大好物のグラタンが待ってるんだった。
速く着替えて、明るい笑顔でお母さんの元へ行かないと。
ゆっくり先生の部屋の扉を閉めると、隣にあるあたしの部屋に駆け込んで、部屋着に着替える。
そして、先生に貰ったお守りを通学カバンに大切にしまったところで、気が付いた。
「あ、絵梨にゃんから貰ったココア、飲むの忘れてた……」
お守りの隣には、帰り際に絵梨にゃんがくれたココアの缶が寂しそうに眠っていた。
でも今は、そのココアの缶がどうしようもなく愛しい。
ココアは冷たくなっても、そこにはあたしの勇気になる気持ちが詰まっているって知っているから。
あたしは少し迷った挙句、そのココアをカバンにしまったまま、部屋を出てお母さんの元へと向かった。
カバンには、ココアの缶とお守りが、仲良さげに並んでいた。
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