俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~



「なに桐生っち。もしかして、あたしのこと気になってて、恋のライバルが増えるからって―――」



「桜井はどれだけ自意識過剰なんだよ!騒ぐのやめて、授業に集中しろ!」



「はーい」




ふんっ。あたしの恋くらい応援してくれたっていいじゃんか。


でも、大人な先生と釣り合う素敵な女性になるには、お上品にならないとね。


珍しく素直に言うことを聞いて黙っているあたしを、桐生っちは気持ち悪そうに見ているけど、決心したんだもん。


絶対に、先生を振り向かせてみせる!


そして、先生のあの冷静な態度を、崩してやるんだから!




「見ててよ、先生!」




右手で握りこぶしを作り、小さな声で呟いた瞬間、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響いた。




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