俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~



声が聞こえてきたほうに視線を移すと、ブラウンの髪色をしている男の子が、あたしの真後ろに立っていた。


あたしと同じクラスの、池谷龍太(いけたにりゅうた)くん。


挨拶はするけれど、そんなに話す機会がなかったため、あまり関わってこなかった人。


そんな池谷くんが、どうしてここに?




「おお、池谷。呼び出して悪かったな」



「いえ、大丈夫です」




あたしの前で淡々と交わされる会話に、ひとり着いていけないあたし。


眉毛をハの字にして、桐生っちと池谷くんを交互に見ていると、突然、桐生っちの口から、

……とんでもない言葉が聞こえてきた。




「というわけで、池谷がこれから毎日、桜井に勉強を教えてくれることになったから」




あたしが先生に家で勉強を教えてもらい、距離を詰めていくという思惑は、あっけなく崩れ去っていった。




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