俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~



「桐生っち、だめ……!」



「なんでだよ。池谷は頭もいいし、留年街道まっしぐらなお前にピッタリじゃないか」



「でもあたしには、愛しの先生が、みっちりと愛のレッスンを――」




続きを言いかけたところで、あたしの言葉はピッタリととまる。




「ごちゃごちゃ言わないでくれる?寝言は寝てから言ってほしいな。とりあえず、教室に来て」




池谷くんが、あたしの手首を掴んでいたからだった。


久しぶりに感じる、人の体温に、心臓がドクドクとうるさくなっていくのが分かる。


キッ……!っと池谷君を睨みつけると、




「それでは桐生先生、お騒がせしてすいませんでした。桜井の留年は必ず阻止してみせますので。それでは」



「え、ちょっと……!」




あたしは、強引な池谷くんに手首を掴まれたまま、職員室を後にした。




.
< 64 / 266 >

この作品をシェア

pagetop