俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~
「桐生っち、だめ……!」
「なんでだよ。池谷は頭もいいし、留年街道まっしぐらなお前にピッタリじゃないか」
「でもあたしには、愛しの先生が、みっちりと愛のレッスンを――」
続きを言いかけたところで、あたしの言葉はピッタリととまる。
「ごちゃごちゃ言わないでくれる?寝言は寝てから言ってほしいな。とりあえず、教室に来て」
池谷くんが、あたしの手首を掴んでいたからだった。
久しぶりに感じる、人の体温に、心臓がドクドクとうるさくなっていくのが分かる。
キッ……!っと池谷君を睨みつけると、
「それでは桐生先生、お騒がせしてすいませんでした。桜井の留年は必ず阻止してみせますので。それでは」
「え、ちょっと……!」
あたしは、強引な池谷くんに手首を掴まれたまま、職員室を後にした。
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