俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~
今のは、空耳でしょうか。
先生があたしに、勉強を、教えてくれる、なんて……。
「ほら、とっとと椅子に座れ。……勉強するぞ」
このセリフで、さっきの先生の発言は、空耳ではなく現実だということが証明された。
何が起こっているのか理解できないまま、あたしは無理矢理椅子に座らされる。
「って、先生は仕事で忙しいはずじゃ……!」
「別にこのくらいなんともない。勉強は無駄になることがひとつもないから、俺的には楽しみだけど」
「あたしバカですよ?先生絶対に大変な思いしますよ?」
「バカだからこそ、教えがいがあるんだよ。それに、お前がさっき話していた両親への気持ちがあるなら尚更。
絶対に、留年を阻止してみせる」
そう言って、先生はあたしの横に座って、問題集を再びペラペラと捲り始めた。
本当に、先生が勉強を教えてくれるなんて、夢みたい。
こうして、学校では池谷くんが、家では先生が勉強を教えてくれる生活がスタートしたのでした。
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