俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~
それからあたしは、一日中絵梨にゃんの小言を聞くハメとなった。
勉強が出来て、運動神経もよくて、おまけに超が付く程の美人。それがあたしの大親友・絵梨にゃん。
あたしの事を心配してくれているっていうのは、痛いほど伝わってくるんだけど…
「あたし、勉強の才能がないからなぁ…」
国語、数学、英語、暗記モノ、全てが苦手。というか、寧ろ学校で学ぶ全ての事が、魔の呪文に聞こえてくる。
自分なりに努力したつもりでも、結果として表われる事がない。
…ドンマイな人生を送ってるよね、柚希。
心の声が口に出ている事に気付かず、ただひたすらに見慣れた道を歩いていく。
そして黄色い建物に差し掛かった瞬間、足が自然と止まった。その黄色い建物の看板には、「桜井医院」と表記されてある。
―――ここは、あたしの家。
正真正銘、桜井一家が経営している診療所なのだ。
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