俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~
キーンコーンカーンコーンと、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、生徒たちは一斉に帰る支度を始めた。
部活に行く人もいれば、アルバイトやデートに向かう人もいて、放課後の教室は活気づいている。
しかし。
今のあたしには、そんな賑やかな放課後をエンジョイしている暇なんてないのだ。
勉強会に向かう前に、問題集を見ながらノートに答えを書き込んでいき、答え合わせをしていた。
「柚、中間テストの日程発表されてたね。掲示板見た?」
「うん、見たよ絵梨にゃん」
絵梨にゃんがあたしの席に来て話しかけてくれるけど、答える余裕があたしにはない。
ごめんなさい、と心の中で謝ると。
「……柚、いい加減顔をあげなさい」
「は、はい!!」
絵梨にゃんのドス黒い声が聞こえ、あたしは慌てて下を向いていた顔をあげた。
……ああ。なんて意志が弱いんだ、あたし。
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