神様は気になさらない(KK2)
咳が止まらなくて、このまま死んでしまうのではないかと思うとき。
ルイは必死に、布団の中で咳き込む声を殺した。

ルイが体調をこじらせていることを、家族の誰にも気づかれたくなかった。
それを知ったときの、家族の失望とかすかな希望がないまぜになったような表情を見ることが、怖かった。


ここから、消えてしまえたらいいのに。


ルイがいるせいで、父も、母も、姉も。
誰も、幸せになれない。
この、できそこないの身体のせいで。


だから、ルイはいつも祈っていた。
誰でもいいから。
どうか、自分をはやく、この世界から連れ去ってください。
これ以上、父や母、姉が、自分のせいで苦しまないように。


あの夜も、だから、窓の内側に立っていた青年を見ても、驚きはしなかった。
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