神様は気になさらない(KK2)
ルイは、ふらついた。
グラスが、手から、落ちる。

「これは……聖水では……ありませんね」

「安心しろ。そう長くは苦しまずに死ねる薬だ。
魔女の一族に我々が長年手こずっていた吸血鬼を倒されたとあっては、教会の威信にかかわるからな。
おまえの姉も、明日にも処刑して、後を追わせてやる。これで、吸血鬼は、私の息子が倒したことになる。息子も、天国に行けるだろう」

「……哀れな、ひとだ」


ルイは、胸に手を当てた。
掌に、毒素を集めて、息を吹きかける。
出された毒素は、黒い塵となって消えた。

そうしてルイは、ゆっくりと、神官長に歩み寄った。
眼鏡を、外す。
瞳の色が、ゆっくりと、変わっていく。
異形者の、金色の双眸。
神官長が、蒼ざめて後ずさる。


「ばかな……」

< 48 / 57 >

この作品をシェア

pagetop