キミはいない。
「何だ、不満なのか…?」
わたしのため息を不満ととったのか、
お父さんは拗ねたように見えた。
「違うの!凄すぎて思わずため息がでただけ。」
「そうか、凄いだろう?」
「うん、最っっ高!」
砂利道を車が進んでいく。
振動で小刻みに揺れる車体と体も、この時ばかりは気にならなかった。
ピタリと振動は止まり、停車したことを告げる。
高陽感はピークを達した。
すぐさま車から飛び降り、少し荒々しくドアを閉めた。
「さあ、ここが新しい家だ!」
お父さんの嬉しそうな声色に、わたしは自然と笑顔になっていた。