Clever LoveStory
一歩、もう一歩。

踏み出した時、砂利を踏んだ音が一瞬、俺を正気にした。
でも一瞬だった。今の『俺』が正気。一瞬でてきた『俺』は逃げだ。
この世界で生きていく自信がない。
みのりのところへ逝く勇気もない。

俺は、みのりと一緒にいたかった。
一番近くでみのりの鼓動を感じていたかった。
今は・・・
今でも変わらない、この気持ち。
ずっといつまでも永遠に、この気持ちは変わらない。

一歩、もう一歩 そして最後の一歩を踏み出そうとした。
そのときだった。

どこかで聞いたことがある、小さな微かな音。
すぐに記憶が蘇ってくる。
貝殻だ、あの時交換した貝殻。

あの日から肌身離さず持っていた、宝物。
その貝がポケットの中で音を立てた。
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