【短編】ウラハラ
車の中で
苦し紛れに言ったけど、そうか始めからこうすればよかったんだ。
柏木さんは何だか納得いってない様子だけど、乗ったもん勝ちだよね。
「で?」
柏木さんの声が張り詰めた空気の車内に響く。流れているBGMも私の頭には入ってこない。
「車に乗ったってことはOKだと思っていいの?」
少しの沈黙。
柏木さんは私の言葉を待っている。
私は深呼吸した。
そして、一気に言った。
「私は…、柏木さんとお付き合いするのは……無理です。…柏木さんには、私より良い子がいっぱいいると思うんです。もっと…私より相応しい子がいると思うんです。だから…、…だから…ごめんなさい!」
柏木さんの方は見れなくて、私はシートに座ったまま頭を下げた。
自分の心臓の音が頭にうるさく響く。
降りろって言われたらどうしよう。
でも、確かにこのまま帰るなんて気まずいし。
沈黙が、苦しい。