【短編】ウラハラ
「それなのに」
柏木さんの手が私の頬に伸びた。
熱くなった私の顔よりもさらに、熱い、手。
「俺がどれだけメールしても、美々ちゃんは仕事のメールにしか返してくれないし」
柏木さんの手が私の癖のない黒髪をいじる。
「……あんなの、からかわれてるとしか思えません」
私はちょっと怒ったように言った。
そりゃね、ガシガシ送られてくるストーカーみたいなメールが柏木さんの出張の日はなくてちょっと寂しいって思ったときもあるけど。
(…楽とも思ったけど)
他の人が気付かない些細な事に気付いてくれてるんだって思ったこともあるけど。
(…はじめはホントにストーカーかとも思ったけど)
「俺をどこまで焦らせば気がすむの?」
柏木さんの手が私の髪に潜っていく。
顔が近づいてくる気配がして慌てて私は顔を背けた。