Milky Way
話し始めてからシンは初めて私の顔を見た。
その表情からは悲しそうな気配は見られなかった。

「琴、ありがとね」

そういって私の頭を撫でる彼女。
撫で続けたまま再び話始める。


「私の本当の両親は私が幼稚園の時に事故で死んじゃったの。トラックとぶつかったんだって。その日私はお祖父ちゃんの家に預けられてたから助かったんだ。」

「うん」

「お葬式も小さくてあまり覚えていないけど周りにいた皆の空気とか『もう会えないのよ』っておばあちゃんに言われてとても悲しくなったのは覚えてる。」

「…うん」

「いっぱい泣いても帰ってこなくて、帰ってこないからいっぱい泣いた。」


いつしか視界がぼやけて私自身が涙を流していることに気付いた。


「泣いているあたしを今のお母さんがいっぱい抱きしめてくれて、頭を撫でてくれた。優しくてあたしはもう絶対に自分の周りの誰かを失いたくないって思ったんだよ。」

「うん」

「あたしは運が良かった。本当の両親が死んじゃっても受け入れてくれる優しい人たちがいたから。例え本当の両親じゃなくても私は不幸なんかじゃない。それどころかとても幸せだなって思うんだよ。」


そう語るとシンは撫でていた私の頭から手を離した。

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