視線の権利
会社に着くと、アルファロメオに大量に積まれていた大きな紙袋がリラックスルームへ運び込まれ、ついでに私も連行された。紙袋と自分の荷物も手に。

オフィスフロアからは見えないリラックスルーム。
遅めのランチタイムも過ぎ、人気はない。

大量の荷物を置き、オーナーは念のため細い指先でがっちり鍵をかけた。

「さて、ちょっと行くわよ」

黙ってオーナーについていくと……


広めでキレイとはいえ

女子トイレ!



し、「シメ」られる?

女子トイレだもん定番よね!オーナー、ポーチから何出すの? え? 細身とはいえ、それ?!

「動かないで」

ジーと音を立ててソレが眉間にあてがわれる。

「眉カットもしたの?ケイナちゃん、眉毛が左右高さ違うのよね。ちょっと剃るからね~」



眉毛、剃り落としの刑???






「下からコームを当てて切るより便利よー。うぶ毛も剃れるし、アタッチメントで長さも調節できるから。安いし買いなさい。コレ」


「あ、ハイ」

へなへなと座り込んでしまいたかった。

「顔、もっと腫れたくないでしょ?」

そういえば鏡を見ると顔が赤い。

オーナーは出先でもらってきたクレンジングオイルと洗顔フォームを手渡して洗顔を促した。

「あ、このメーカー」

今までどの自然系化粧品を使ってみてもダメだったのに、大手メーカーの?


「このラインのテレビCMは知らないでしょう? 漢方薬がどっさりで予算の都合上、広告はポスターも小さめの。痛かったらいいなさい」


言われるままオイルと洗顔フォームを使うと、肌のピリピリが治ってしまった。
「すごい!」

オーナーはニッコリ微笑み、コレもそんなに高くないのよ。と、クレンジングから乳液から保湿液の試供品を紙袋いっぱいに差し出した。

そして私の荷物から化粧ポーチを出すように命じると、


ため息をついた。

「ケイナちゃん、化粧品の消費期限って知ってる?」



「食用で使われるパラペンのみ添加でも一年が限度です!」

息を切らせ髪を振り乱したアキノがそこに居た。




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