視線の権利
そのまま私たちはデパートに向かおうとしたけれど、薦められた化粧品がデパートでは取り扱っていない事に気づいて、ショッピングモールへと向かった。
アキノは文句ひとつ言わず、安価な化粧品のショップで、私がアドバイザーに購入した商品の説明やメイクをされている間、興味深げにあれこれと化粧品や手入れ方法をアドバイザーに訊きまくっていた。
ホントに研究熱心。
結局、ふたりともそれぞれ化粧品や新しいパフを買い、本屋さんでああだこうだと検討してメイクブックやファッション誌を手に入れてからの出発となった。
「化粧品屋さんで時間とっちゃったね」
申し訳なさそうな私にアキノはカラカラと笑って
「あのね、今は春物買う人ばかりだから、合コン用の服はまだまだあるし時間とともに安くなるの」
何年ぶりかな。
女友達とショッピングなんて。
プライベートなアキノに傲慢ともとれる態度はなくて。
呼吸がしやすい気がした。
デパートではまず私の「勝負服」選びになり、
六本木のイタリアンで合コンというので
ちょっと恥ずかしかったけどパステルピンクのスーツを買った。
「スカート丈短すぎない?」
「あのねぇ、ドコに行くための服?」
「脚太いのにぃ」
「ブーツじゃなくてもイイ靴ならヒールと引き締めストッキングでクリアできんの!」
という訳で靴売り場、ストッキング売り場、カバン売り場へ……。
アキノの言う通りみんな安くて予算も余裕。
「じゃ、次は私の買い物ね」
「え? アキノがデパートに来たかったんじゃ?」
「私は行き着けのショップで買うのよ」
当たり前といわんばかりのアキノ。
なんだか後光が差して見える。
そしてアキノは
カフェでの昼食をはさんで
めちゃアゲな専門店で気合いたっぷりな服もアクセも靴も
暴れ買いしたのだった。