視線の権利
「ねぇアキノ」


私はドレッサーの鏡を借りてマスカラの練習をしながら、

イオンスチーマーでフェイスエステをしているアキノに話しかけた。


「なあ~にぃ?」


「なんかさ、みんなの対応が違ったよ。今日」


「そりゃあそーでしょ~ね。やっとマトモな女の子の格好してったしー」


え! そんなにひどかった?


じゃあ見た目うんぬん以前??


「社員のオトコどもが明るくなったってさ~」


「私が?」


「ケイナって、わっかりやすい。ミサコさんや、メイク盛ってるバイト二人組が綺麗だと思う?」


「え?えと……ミサコさん美人だし、バイトさんも可愛いし」


「変な基準で他人を『視る』のね」


私ははみ出したマスカラをリムーバーで落としにかかった。


わたしが?


『視る』?


「ん~気持ち良かった!交替!」


「え?熱くないの?」

「調節きくから!やんなさいよ!」


「う、うん」



蒸気に顔を当てる。


一昨日も昨日も、よく眠れた。


少し早起きするのも慣れてきた。


よく眠ると、モニターを見る目の疲れも緩和されてきた。


今日一日で、



会社の人と一番たくさん


笑顔で言葉を交わしたな。



こんな私も居たんだ?

合コン、かあ。

月曜日は以前の代休とったから

お酒に弱い私も安心。

でも。初対面の人、しかも男性たちと話せるかな?

ひたすらイタリアンを堪能かな?
壁の花でもいいよ。
朝、大量のゴミを捨てた今日は金曜日。

合コンの日は


日曜日。明後日か。

2月14日。



私の24歳の誕生日。
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