視線の権利


「お、アキノ様ご一行」。
幹事らしい肩幅の広い男性の声を合図に男性陣が一斉に立ち上がった。


ひっ! 知らないノリ!

「塚本、久しぶりね。メール見たけどふたり増やしたって?」

「は、はい!現役生の友人がどうしてもと。念の為、長谷川先輩を呼びました」

「2人とも遅れてくるのね」


「塚本さんはアキノ先輩のひとつ下の主将だったひとなんです」

こそっと隣の女の子が耳打ちしてきた。

「知らない奴を。まあいいわ。あの長谷川先輩が来るなら」

かくして合コンは和やかな呑み会ムードで開始された。

なんだかホッとする。

以前の合コンは、やたら大学名や学部のレベルの高さや、流行の話ばかりで。


居心地はよくなくて。
でも一目惚れなんかして、デートに誘われて有頂天になって……。

やめよう! 今を楽しもう!

乾杯をし、率先して私とアキノはサラダや料理を取り分ける。

だけどレディーファーストな彼らもすすんでもてなしてくれる。


少し遅れて部員の友人の男の子が到着した。
彼も明るくて気のいい感じ。


なのに。


小皿を手渡した手に指が重ねられた時。


偶然とはいえ



ゾクリとした。

なに? この感覚。

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